拙者は、おひつ侍 原 壱輩でござる。
おひつは古くから我々日本人に馴染みが深く、生活の中に使われて来たことは容易に想像できると存ずるが、昔はどの様に使われていたであろうか?
現在とは、使い方もニーズの大いに異なる事と存ずる。
江戸時代の使われ方は?
江戸時代辺りまで遡り調べてみると、我々の様な一般庶民の調理作業は殆どが
“夜間”夕食時に行なわれていた!と云うのでござる。
昔は皆遅くまで働く事が当たり前であったのでござる。(そこは現代と同様でござるなぁ!)
何故、主に夜間に調理が行なわれていたかと申すと、
まず、朝から晩まで生活のため忙しく働いており、朝はゆっくりと食事の支度をする時間的な余裕がござらぬこと。
また、調理のための“かまど”を使用するため、朝から火を焚いて調理に使うと、日中外出などで、その後の火の始末が出来ず火事になり易いため、家人が出かけない夜間に火を使う事が多かった様でござる。
この様な理由から、ごはんを炊くサイクルは、夕食時に調理・炊飯し、翌日は前夜に炊いたごはんを冷や飯として食べると云う生活サイクルがあったようでござる。
ごはんを炊くのは、羽釜や鍋などの金属製を使用するため、炊き上がり後は熱源が無ければ、金属は放熱速度も早いためごはんが冷めることが速く、その為木製のおひつを多用した様でござる。
また、大家族の家庭も多かった様なので、一同で食事を合わせる訳にも行かず、食事時間差も大きいことから、保温性、利便性の点からもおひつを利用する事が合理的であったのでござる。
また、大家族用であったため、標準のサイズが、1升以上の容量がある物が普通であったのでござる。
現代のニーズは?
変わって現代の食事のニーズは、「小人数でも美味しく!」でござる。
ご飯を炊く量も1日に1~2合の方が多いことと存ずる。 小量のごはんを美味しく食べるためにおひつは最適でござる。
おひつはごはんを美味しく変える事の他に、美味しい状態をキープ出来ると云う点が何より優れているのでござる。
大家族、大人数でワイワイと食べる事が出来れば最高なご馳走であるが、中々実際には叶わぬ事でござる。 せめて、中心のごはんはより良い状態で召し上がって頂きたいと強く念ずることでござる。
小人数だからこそ、現代はおひつを上手にお使い頂き、豊かな心持ちで日々をお暮らし頂きたいのでござる。