おひつ初め1歩
木製おひつの使い方(さわら材(椹))

木製おひつ(特にさわら材)について使い方、
また、使用する上での注意点をご説明します。

1. 初めにすべきこと

新品の木製おひつがお手元にある場合には、まず、「アク抜き作業」を行います。

この「アク抜き作業」は、製造時のほこりを落とす事と、おひつを水に馴染ませ長く使うために行う、儀式の様なものです。

アク抜き作業には、水道水と「米糠(生糠)」または、「食用酢」のどちらかの品物が必要です。
どちらの品物が正しいと云う訳では無く、昔から行われている方法を、おひつの条件等に併せてお選び頂いて構いません。

おひつ堂では、箍(タガ)の材質により、選択してお伝えしています。

米糠(生糠)使用の場合は、精米を行っている所から、分けて頂くか、お米屋さんから頂いてくる必要が有るでしょう。量は7寸サイズで、70100g程度が目安です。

おひつ堂では、銅製タガの場合は、特に生糠をお奨めしています。

銅製タガは、酸に反応して汚れ易いため、食酢はお奨めしません。

食用酢をご使用の場合は、ご家庭に有るお酢4050cc(濃度2%程度)を目安に使用して下さい。(基本的に、酢の原料は不問です。)

竹タガの場合には、銅製タガとは違い酸化しないため、使用しても問題が無いと思います。

アク抜き手順

  1. 水道水を入れますので、周りが濡れても構わない場所を選びます。
  2. おひつの身(胴)に米糠1袋(おひつ堂製品では付属の量)または、食用酢4050ccを開封し投入します。
  3. 水道水を身の89分目までいれます。(生糠は浮くので、水をかき混ぜ米糠を沈ませます。)
  4. そのまま、3時間程度、放置します。
  5. 3時間程度経つと、おひつの板目から水が滲みだして来ます。おひつを持ち上げると、底から水が漏れているように、周りが水で濡れている状態です。
  6. 水が滲みだすと、完了ですので、中の糠と水は捨てます。
  7. 綺麗に水洗いを行い、乾いたふきんで拭上げ、十分に乾燥させます。(乾燥は半日~1日程度)完了です。

注意点

  • アク抜きを行う時間は、34時間程度にとどめましょう。 長時間(1日程度)行うと、おひつの身(胴)に水シミの様な模様が付いてしまう事がありますので、注意しましょう。
  • 特に、銅製タガのおひつに、酢水を入れた場合には、銅が酸と反応し銅が汚れる可能性があるため、34時間以上酢水を入れない事をお奨めします。
  • アク抜きを行わなくとも使う事は出来ますが、製造時のホコリ等や長持ちの観点からアク抜きをお奨めします。

2. 日常での使い方

ごはんを入れる

ごはんを入れる際には、乾いたふきんで空拭きします。(ホコリを払うため)

おひつは濡らさず乾いた状態で、ごはんを入れます

理由は、ごはんの余分な水分を吸収することが、大きな役目なので、濡らしてしまうと水分を吸収する能力が半減してしまうためです。

また、乾いた状態でごはんを入れた方が、ごはんが綺麗に剥がれやすくなります。 逆におひつ内部を濡らしてからごはんを入れると、ベタベタが強くなり、ごはん粒が剥がれにくくなります。 

ふきんは、現在は不要です。

テレビドラマの中におひつの上にふきんを掛けてある映像があります。しかし、実際にはふきんを入れる方が不衛生の様に思います。
実際には、蓋も木製ですから十分に吸収出来るため、ふきんを掛ける理由はないと考えます。 

昔の家庭では、現代のような空調の効いた環境は無く、夏場の高温時に蒸れ過ぎない様に工夫した結果がふきんを掛ける(または挟む)だったのではないかと推察します。

現代であればきちんと蓋をして保管した方が、おひつの効果を十分に生かす使い方とおもいます。

おひつ使用後 ~ごはんが空に開いたら~

洗う

使用後は、ぬるま湯又は水を入れ、3060秒程度うるかし、たわし等を使用して良く米粒・ぬめりを洗い流してから、乾いたふきんで水分を良く拭き取ります。

拭き取りが不十分で、カビの発生する事例がありましたので、ご注意下さい。

食器用洗剤は、基本的に不要です。白米のみの場合は油分が少ないため、水洗いのみで十分洗うことができます。 

「味ごはんや炊き込みごはん」など、油分のある具材をいれたごはんでご使用の場合には、スポンジに洗剤を付けて一度洗い、その後もう一度たわしで水洗いをして、全体として2度洗いを行うことで、綺麗に洗い上げることができます。

おひつが空になってから、あまり時間を置かずに洗いましょう。

使用後、数時間経つと、残った米粒が固くなり洗いづらくなります。

また、数日経過してしまうとカビ等が発生し、おひつが使えなくなる可能性があります。

乾燥させる

風通しの良い、直射日光が当たらない場所に陰干しします。 

おひつの身(胴)は、開口部を上を向けて乾燥し易い様に置いて乾燥させます。蓋は身に立てかけて構いません。

当社特製おひつでは、乾燥珪藻土乾燥ブロックが付属していますので、身の中に置いて乾燥させると、乾燥が促進されます。

次回使用できるかどうか?の目安は、乾燥状態を目で見て判断できます。

判断の基準は、身の底板の隅が一番乾燥しづらい部分なので、この部分を見て湿った色が乾いた色になっている事を確認して判断します。

おひつの材が木材ですので、濡れて乾燥してない状態が連続して続くことで、木材の寿命が短くなってしまいます。 永く綺麗に使用するためには、十二分に乾燥させながら使用することが最良と考えます。

3.メンテナンス

しばらくお休み 保管しておく場合

おひつをしばらく使う予定が無く、保管する場合には注意点があります。

1紙で包む

木材からヤニ(天然樹脂)が出てくる可能性があるため、保管時には、印刷インクの無い

清潔な綿布か紙(和紙や障子紙が最適) に包んで保管します。 印刷インクがある紙(例えば新聞紙はNG)は、ヤニがインクを浮かせてインクがおひつの木肌に付着すると、染みこんで落ちない場合があります。

そのため、汚れのない紙に包むことをお奨めします。

2蓋を底に重ね密閉しない

蓋を身に被せて、長期間(1ヶ月以上)内部が密閉されると、ヤニが表面に出やすくなります。

そのため、蓋を身の下に置いてて収納することで、密閉を解消することをお奨めします。 それでも、木口からヤニが出やすいので、身と蓋の接地面には綿布か紙を敷いて保管して下さい。

箍(タガ)が緩んでしまった場合の対処

基本的に木材は使用していると、徐々に痩せてきます。

木は水分を含むと膨張し、乾燥すると収縮します。 その膨張と収縮を繰り返しながら、おひつの直径は小さくなり、箍が緩み外れやすくなってゆきます。

特に使い初めから半年程度経つと、大きく痩せて直径が変化します。

少しの緩みであれば、従前の位置より直径の広い上部へ押し上げることで、きつくなり使用出来るようになります。

しかし、緩みが大きく頻繁に箍が緩む場合には、箍の嵌め替えをお奨めします。

費用は掛かりますが、一度痩せた木材はその後は大きく痩せる事はありません。

そのため、嵌め替えを行った箍は緩みにくく、3度目の嵌め替えは過去にほとんど例が有りません。